デザイン事務所を辞めてデザイナーになった。
私、飯倉の前職は大手工業デザイン会社に勤める勤め人でした。
別段私自身はデザイナーではなくてそれ以外の仕事(今考えても何をやっていたのかよく覚えていません(笑))
をしていたのですが、とにかく会社自体はデザインを行う会社だったのです。
当然の事ながらデザイン会社なのだからきれいな物を作ってなんぼの物のはずなのですが、実際にはなかなか良い
物が出来ないのです。どういうことかと言えば、その物がスタンドアローンだったらともかく、実際使われる現場に
置かれると、どれもなんとも不細工な物に見えてしまうのです。
なぜか???それはやっぱりせまっくるしい所に無理矢理たくさんの物を押し込んでいるからではないかと思うのです。
結局、デザイナーも、顧客(メーカー)も作って売りつけるところまでを考えて、その後どのように使われるかまで
は考えていないのでしょうね。
なんやかんやでこの会社を退職して今の仕事を始めたわけですが、始めた理由の一つが「俺流デザイナーになる!」
なのです。
私はデザインなど勉強したこともなく、デザイン画やら、CADで図面を引いたりなどもまったくやる気がありません。
ではどのようにデザインを行うかというと、この世から物事をなくす。
「無」をデザインするのです。
なんのこっちゃと思われるかも知れませんが、少なくとも現代日本では「無」は大変価値のある物だと思うのです。
仕事柄あちらこちらのお宅におじゃまするのですが、どちらさんも物を一杯抱えてヒーヒー!言ってます。お金持ちの
家でもだめですね。金があるから部屋が一杯になる限界まで買ってしまうようです。広いガレージがあっても車のはい
る分をのぞいてがらくたで一杯。人間は横になって車の横を通ります。
これが現実。
分譲マンションのCMなど見てますとお部屋は一部の家具を残して物がありませんね、効果的な部屋の整頓はいらない物
を捨てることなどとも言います。
車のCMだって他の車が全くないところを走り抜ける撮影しているでしょ。渋滞にはまっている車をCMに使ってるのは
ありません。
このように、「無」と「美」は関係があるにもかかわらずデザイナーが手を出さないのは「無」で「美」を表現するの
が困難だからでしょうね。何か具体的な物をもってきて「ほら、これって良いでしょ?かっこいいでしょ?」とやった方
がわかりやすいですからネ。
で、理念はわかったけれどそれをどう具体化するのかと言いますと、ここで今の私の商売。自転車出張修理と、サンメカ
スクールが出てくるのです。前置きをさんざん読んでくださった皆さんありがとう。
具体的に「無」をどのように表現するかと言いますと、一つのやり方として自転車を徹底的に直すというのを思いついた
のです。これなら私にも出来る!
直すんなら既存の自転車屋がやってるではないか、とお思いの皆さん!
ノンノンノン!!!
たいていの自転車屋さんはあくまで自転車販売店であって自転車修理店を兼務しているわけではありません。おまけ的に
修理をすることはあってもあくまで新車販売で生きているのです。ですから修理に身が入らない(気合いの入った店もたま
にありますが)。中には直る自転車も直らないといって新車を勧めたりする販売店まである始末です。
このため自転車の使い捨てが当たり前になって放置自転車が多数発生することの一因となりました(千と千尋を見に行った
ときに川の神様がヘドロと一緒に自転車を吐き出したのにはあきれた。自転車は川に捨てられる代表的ゴミの一つかい?)。
このようにさっさと捨てるのが常識になってしまったのは修理のインフラがそろっていないのが大きな要因だと考えた私
は自転車出張修理業を始めたのです。電話一本で修理にきてくれるのが当たり前になれば、自転車は整備しながら長くつきあ
うのが当たり前になると思うのです。そうすれば放置自転車もなくなる。ほら、物がへった、「無」に一歩近づいたでしょ!
もう一つのサンメカスクールの方です。これはある程度自転車好きな人のための物なのですが、出張修理業と原点は同じ所
にあるのです。
少しでも自転車に興味を持ち出すと雑誌やらに出ているある程度マニアックなお店にわざわざ出かけていったりするもので
す。しかしこれもなかなか良いお店には当たりません。店の作りがきれいなだけで中身(商品知識や、技術、良心的商売、
etc,etc,etc・・・)がない店の話も多々聞きます。在庫をはくことだけしか頭にない店主もいるでしょう。修理整備に身の
入らない店も多々あることは想像できます。
ある程度高額な(10万円とか)お金を出して購入した自転車は、当然購入した人はきちんと整備された製品として完璧
な物を手に入れたと思っているでしょう。しかし実体はメーカーで7〜9割(運搬のためこうなっている)組み立てられた物を
店にきてから最低限の組み付け調整を行って売られているのが現実です。10万円出しても販売店は特に注意して
組み立てているということはないです。
販売店としては関心があるのは利益がどれだけ取れたかであって、細かい部分の調整に人件費をかけるくらいなら接客に時間
を割いた方が売場効率がよいと考えているかもしれません。実際私が妻子持ちの売場責任者だったら、数字をあげ
るためには自転車そのものは売った時点で走ればよいとつい考えてしまうかも知れません。
この状況は理想とは異なる物なのですが、販売店に改善をしてもらうのは困難ではないかと思うのです。なぜならば、10万円
程度の自転車では入荷した自転車をすべてチェックしてしっかり組み付け直してから売ったのでは定価販売でも人件費を考えれ
ば赤字になるおそれがあるのではないでしょうか??そもそも今どき定価で買う人も少ないと思いますが・・・。
そこでサンメカスクールの出番なのです。スクールと呼んではいますが、ここには決まりきったカリキュラムはありません。
生徒さんの自転車をより理想的な物に。よりその人個人の物にするための場にしたいのです。現状を一歩でも理想に近づけるための
場なのです。
当然一企業ですのでお金はちょうだいいたします。しかし、本当はどうなんだ!!ベストな状態のマイバイシクル
とはどんなモンなんじゃい!ということを知りたい方はぜひいらしてください。
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